嘘800

私は彼女に、自分が書こうとしていることはほんとうにあった話だ、
しかしそんな話はあるところまで進むと、
事実であることに耐えがたくなってしまう、
そこで自分は話に変更を加えざるを得ないのだ、と答える。
私は彼女に、自分の身の上話を書こうとしているのだが、
私にはそれができない、それをするだけの気丈さがない、
その話はあまりにも深く私自身を傷つけるのだ、と言う。


アゴタ・クリストフ「第三の嘘」


「あるところ」の手前で止まっていると
不幸ではない記録になり得るのだろうか